香港探訪記 四日目 あらためて目を向ける「現実」

2016.05.13

坂爪 祐貴

坂爪 祐貴

早稲田大学3年生

香港の旅もとうとう四日目。
二日目、三日目とそれぞれ「革命」と「自由」について見つめてきたが、残り二日となるこの日は、香港の人々が向き合う「現実」に目を向けた。

 

失われつつある、香港の「言論の自由」

最近、習金平の「メディアの姓は党」という発言や、メディアに党の代弁を迫る姿勢などからわかるように、中国政府のメディアへの圧力が強まってきている。

四日目にインタビューしたのは、香港の民主化に賛同しているメディアの社長を務められている楊懷康さん。

インタビューでは、メディア統制の状況などを語ってくださった。
香港でのメディアへの圧力も雨傘革命を契機に強まり、楊さんの会社も、雨傘革命の際新聞を発行させないために会社を包囲されたことがあったという。

現在楊さんの会社は「党」の姓を名乗っていない唯一のメディアで、ハイエクの自由主義思想を会社の思想の柱に据えているとのこと。「自由」の思想のもと、ペンで「全体主義」と戦うジャーナリストの姿をこの目で見ることができた。

(ハイエク像と一緒に)

 

雨傘革命の現場を見て思ったこと

この日、インタビュー以外の時間に、雨傘革命の現場を訪れた。

向かったのは金融街のど真ん中、雨傘革命で香港市民が泊まり込みで選挙した幹線道路だ。すぐそばに香港に駐留している中国人民解放軍の本部があり、それに向かい合う形で香港の立法会がそびえたっている。道路わきにはレノンウォールという、雨傘革命の際に壁中に付箋を貼った壁を見ることができた。

道路はかなり広く、たくさんの車が絶え間なく走っている。香港に来る前、雑誌やネットで占拠の映像を見てはいたが、実際に訪れてみると道路の広さ、交通量の多さに驚く。「ここを占拠したのか・・・」としばらくあっけにとられた。

立法会の入り口を訪れてみると、雨傘革命の名残を見ることができた。入り口前の道路や手すりに、雨傘革命がここで起こったことを示すように、メッセージを描いた傘などが残されていた。

 

“あの”失踪事件の書店-、「銅鑼湾書店」を訪れて

雨傘革命の現場以外にもう一ヶ所訪れた場所がある。

今回滞在しているホテルの近くにある、「銅鑼湾書店」だ。銅鑼湾書店は、中国共産党幹部のスキャンダルなどを描いた「発禁本」という書籍を扱っていた書店で、昨年からこの書店の関係者5人が中国本土で行方不明となる事件が起きた。ニュースで見た方も多いだろう。

(「銅鑼湾書店」の入るビルの階段)

書店は銅鑼湾駅を出てすぐ、商店街の一角にひっそりと建つビルの中にある。ビルの階段の壁には、発禁本と言われる本の表紙のコピーがびっしりと貼られていた。書店はしばらく営業していないとのことで、入り口には錠がかかっており、失踪した5人の顔写真が貼ってあった。

現地の方によると、発禁本の類の販売は香港のどこでもされているが、銅鑼湾書店はその大本だったのだそう。失踪事件について聞いてみると、人によって反応は様々だったが、中国政府によるものという答えが多く返ってきた。

 

香港滞在、四日目を振り返る

香港の自由は「失われつつある」あるいは「失われている」。政治参加の自由だけでなく、言論の自由、出版の自由まで侵されつつある。

そうした中で自由を求めて戦う人たちがいる。危険と隣り合わせの状況で、圧力に屈せずにペンや運動といった手段で変えられるかわからない巨大な現実と戦うというのは相当な覚悟を必要とするものだろう。

楊懷康さんは、香港の人々は海外の人々と同様、本来憲法で政治参加の自由を保障されているはずなのに、外国の人々は自由があって私たちにはないというのはおかしいと強く語っていた。

香港の人々が心から願う「自由」の重みを痛感した一日となった。

 

【参考:ハイエクって?】

(ハイエク像)

フリードリヒ・アウグスト・フォン・ハイエク(1899年~1992年)
ノーベル経済学賞の受賞者であり、自由主義の思想家。
人間の理性の限界を認める重要性を指摘し、全体主義に見られる計画経済には真っ向から反対。国家による強制ではなく、個人の自由を尊重するべきであるなど、壮大なスケールで自由主義思想を展開した。

参照記事

「僕が香港に飛ぶ理由」
http://truthyouth.jp/2016/152/

香港探訪記 一日目 「初めて見る、香港の街」
http://truthyouth.jp/2016/163/

香港探訪記 二日目 「初めて会う、革命のリーダーたち」
http://truthyouth.jp/2016/174/

香港探訪記 三日目 「あらためて考える『自由』って何だろう?」
http://truthyouth.jp/2016/181/

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